拉致被害者の家族らと菅直人首相の面会は、家族らの抗議デモと政府への要請文提出に合わせ、急遽(きゅうきょ)設定されたものだ。家族が6年ぶりのデモに及んだのは、民主党政権になって全く事態が動いていないことに対する憤りと、「拉致問題が置いてきぼりにされてしまう」との焦燥感からだった。
面会で「皆さんの気持ちを受け止める。家族の怒りを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と北朝鮮に圧力を強めていくことを約束した首相。胸には拉致問題への取り組みを示す「ブルーリボン」のバッジを付けていたが、増元るみ子さん=拉致当時(24)=の弟で家族会事務局長の照明さん(54)は「菅さんがバッジを付けるのは初めて見た」。
首相が面会を検討し始めたのはわずか2日前。8日の閣僚の任命の際、中井洽(ひろし)国家公安委員長・拉致問題担当相が「拉致被害者家族の集会があり、ここまで歩いてこられるから一分でもお会いになれば」と持ちかけた。
それに対し首相は「時間があるか、仙谷さん(官房長官)のところで検討する」と答えた。「自分が拉致問題に無関心みたいな評価が持たれている」との心配も口にしていたという。
首相との面会を終えた家族らは、支援者ら約1千人と合流し、「すべての拉致被害者をすぐに返せ!」と国会周辺を練り歩いた。
今回のデモは首相交代を見越してのものではなかった。「本当にいまこの状況を憂えている姿を(政府と北朝鮮に)見せたい」。横田めぐみさんの母、早紀江さんが今年3月、口にしたひと言に家族らが応じた結果だった。
早紀江さんは「北朝鮮も日本のニュースを見ている。日本が拉致問題で沈黙していると思われるわけにはいかない。これだけ国民が怒っているということを示したかった」と語った上で、いまだ方向性が見えない政府の態度をこう批判した。
「同じ子供を持つ親として本気で救うんだという気概を持ってほしい。何十年もヤミの中で助けを求めて叫んでいる家族がいるんです」(桜井紀雄)
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